読了本

yAm2005-08-31

■なんとか8月中に読み終わった。たまたま積読の中から手に取ったものだけれど夏休みの課題図書としてはなかなかよかった。少し決まりすぎ感はあるものの。■村上春樹さんの書いたものは『ねじまき鳥クロニクル』以来で、思っていた通り、夢を見ているような、寓話的な、体験アドベンチャー的な物語。ストーリーに登場する多くの象徴的なキーワードやエピソードがどういう意味をもつのか?っていうのをひとつひとつここで挙げていくのも長くなるのでやめる(「海辺のカフカ」って題名は「あっち」と「こっち」の間にいるカフカくんってことだとは思った)。ただ村上さんの書く長篇は例によってとても個人的(うまく言えないけど、あまりその作品について誰かと語り合いたいと思わない、または「ひとり」ということを否応なく思わせられる、とかそういった意味で)だなといつも思うし、そういうものってけっこうすきだなと思う。最近特に。■小説の中にも描かれる、理不尽な暴力や暴力的な性、想像力のない他者というものは自分たちが生活するこの現実にも確かにあって、そういうものにつぶされずに生きていくためには、想像力と強さを手に入れなくてはならないというところには大いに頷いた。全然他人事じゃない。「タフでなくては生きていけない」。■一方佐藤さんの小説は、読んでいて、こどものころ目にした体験した、例えば、意味もわからずひらがなで記憶されることばとか、ケガして流れた血とか、じゃりじゃりと砂の入ったビーチサンダルのこととか、新しい遊びを考えたこととか、何かを見つけてみんなで興奮したことなんかを断片的に連想的に思い出した。今思い出すと何かかなしい、あの遠い夏の日という感じ。クオリティの高い児童文学だなと思いました。おわり。