毎日新聞掲載 いつもここから 山田一成の『やまだ眼』

mixi佐藤雅彦コミュニティよりメモ。

「ボクシングで凄まじい試合をした後、グローブでマイク持ってる姿が何かかわいらしかった。」


解説・佐藤雅彦
「図らずも、かわいいもの。

  • 駅の喫煙区域の枠内でタバコを吸う不良、
  • ちょっと飛び出ている寝癖の髪、
  • 朝礼の時の「小さく前へならえ」、
  • 裏返しの靴下にある2本のツノ、
  • たこのまくらという海の生物、
  • 条件反射のパブロスの犬、
  • 皇室の蚕「小石丸」、
  • 素数蝉、
  • サンドウィッチ伯爵
  • 木槌を叩く裁判官、
  • 名前だけがかわいいピロリ菌、
  • ミトコンドリア
  • 「いたちごっこ」という言葉、
  • 台形の面積を求める公式(上底+下底)×高さ÷2、
  • 競技中バナナを食べるタイガー・ウッズ
  • ピコグラムという単位、
  • 第一次反抗期、
  • ジャンボ機の背におぶさったスペースシャトル
  • 凄まじい試合をした後、グローブのままマイクを持つボクサーの姿。」

「商店街の電気屋さんでおばあちゃんが電気製品を正価で買っていた。」



解説・佐藤雅彦
「生き馬の目を抜く時代、情報や流通の進化は、いろんなところに潜んでいた時間や経費の切りつめを可能にした。インターネットで世界中の品物が自宅で手に入り、同じ製品でもより安い品を探し出すこともできる。そんな今、「電気屋さん」で「おばあちゃん」が「正価」で買っている様は、何かを訴えかける。それは決して昔を懐かしむ気持ちではない。「電気製品は電気屋で」とか「正価」ということが示唆しているのは、自分が所属している社会に対して疑うことのない従順さである。それを、無知とか負けと呼ぶのは容易だが、それが成立していたと時の人々の安寧を思うと、それはひとつの幸せの形であったと素直に思う。」