毎日新聞掲載 いつもここから 山田一成の『やまだ眼』
「ボクシングで凄まじい試合をした後、グローブでマイク持ってる姿が何かかわいらしかった。」
解説・佐藤雅彦
「図らずも、かわいいもの。
「商店街の電気屋さんでおばあちゃんが電気製品を正価で買っていた。」
解説・佐藤雅彦
「生き馬の目を抜く時代、情報や流通の進化は、いろんなところに潜んでいた時間や経費の切りつめを可能にした。インターネットで世界中の品物が自宅で手に入り、同じ製品でもより安い品を探し出すこともできる。そんな今、「電気屋さん」で「おばあちゃん」が「正価」で買っている様は、何かを訴えかける。それは決して昔を懐かしむ気持ちではない。「電気製品は電気屋で」とか「正価」ということが示唆しているのは、自分が所属している社会に対して疑うことのない従順さである。それを、無知とか負けと呼ぶのは容易だが、それが成立していたと時の人々の安寧を思うと、それはひとつの幸せの形であったと素直に思う。」